ヨーロッパのピッチで日本語が飛び交う光景が、もはや珍しくなくなりました。
プレミアリーグ、ブンデスリーガ、セリエA、ラ・リーガ——世界最高峰のリーグに日本人選手が当たり前のように名を連ねる時代です。かつて三浦知良選手がイタリア・セリエAに挑戦した1994年から約30年。日本人の海外サッカー挑戦の歴史は、想像を超えるスピードで進化を遂げてきました。
個人的にヨーロッパサッカーを追い続けてきた中で感じるのは、単に「海外に行く選手が増えた」という量的な変化だけではないということです。ポジションの多様化、移籍金の高騰、そしてクラブ内での役割の変化——質的な飛躍がここ数年で一気に加速しています。
この記事で学べること
- 欧州5大リーグに在籍する日本人選手は現在40名以上に達している
- ブンデスリーガは日本人選手にとって最も成功率が高いリーグである
- 三笘薫や久保建英の活躍が日本人選手の市場価値を大きく押し上げた
- GKからFWまで全ポジションで日本人が主力を務める時代に突入している
- 日本人選手の海外移籍には明確な成功パターンが存在する
欧州5大リーグで活躍する日本人選手の現在地
日本人選手の海外挑戦は、もはや「挑戦」という言葉が似合わないほど定着しています。
2024-25シーズンの時点で、イングランド・プレミアリーグ、ドイツ・ブンデスリーガ、スペイン・ラ・リーガ、イタリア・セリエA、フランス・リーグアンの5大リーグすべてに日本人選手が在籍しています。これは10年前には考えられなかった状況です。
特にブンデスリーガは「日本人選手の登竜門」とも呼ばれ、最も多くの日本人選手を受け入れてきた歴史があります。香川真司選手がドルトムントでリーグ優勝に貢献して以来、ドイツは日本人選手にとって最も親和性の高いリーグとなりました。
プレミアリーグの日本人選手
世界最高峰のリーグと称されるイングランド・プレミアリーグ。ここで日本人選手が存在感を示すことの意味は非常に大きいと言えます。
三笘薫選手(ブライトン)は、プレミアリーグで最も成功した日本人選手の一人です。左サイドからの切れ味鋭いドリブルは「カオル・ミトマ」の名をイングランド中に知らしめました。2022-23シーズンに7ゴール5アシストという成績を残し、ブライトンのヨーロッパリーグ出場に大きく貢献しています。
冨安健洋選手(アーセナル)は、名門アーセナルでセンターバックおよび右サイドバックとしてプレーしています。守備の安定感と冷静な判断力は、アルテタ監督からの信頼も厚く、怪我さえなければスタメンに名を連ねる実力の持ち主です。
遠藤航選手はリヴァプールに在籍し、アンカーとしてのデュエル勝率の高さで知られています。ブンデスリーガ時代にデュエル王に輝いた実績を引っさげ、世界最高峰の舞台に挑んでいます。
ブンデスリーガの日本人選手
ドイツは日本人選手にとって最も実績のあるリーグです。
その理由は明確で、ドイツのサッカー文化が日本人選手の特性——勤勉さ、戦術理解力、チームへの献身性——と非常に相性が良いからです。クラブ側も日本人選手の受け入れに積極的で、言語サポートや生活環境の整備が進んでいるケースが多く見られます。
堂安律選手(フライブルク)は、攻撃的なポジションで安定したパフォーマンスを発揮しています。右足から繰り出される正確なシュートとクロスは、ブンデスリーガでも高い評価を受けています。
板倉滉選手(ボルシアMG)はセンターバックとして活躍し、日本代表でも守備の要として定着しました。空中戦の強さとビルドアップ能力を兼ね備えた現代型のディフェンダーです。
ラ・リーガの日本人選手
スペイン・ラ・リーガでは、久保建英選手(レアル・ソシエダ)が日本人選手の新たな可能性を切り拓いています。
レアル・マドリードの下部組織出身という経歴を持つ久保選手は、テクニックと創造性でラ・リーガの舞台でも通用することを証明しました。レアル・ソシエダではチームの攻撃を牽引し、チャンピオンズリーグの舞台でもゴールを決めています。
スペインリーグは技術的に非常に高いレベルが求められるため、日本人選手にとってはハードルが高いリーグとされてきました。しかし久保選手の成功は、後に続く選手たちに大きな道標を示しています。
セリエAとリーグアンの日本人選手
イタリア・セリエAでは、鎌田大地選手がクリスタル・パレスへ移籍する前にラツィオでプレーし、イタリアサッカーの戦術的な厳しさの中で成長を見せました。
フランス・リーグアンでも複数の日本人選手が活躍しており、南野拓実選手がモナコでプレーするなど、5大リーグすべてに日本人選手の足跡が刻まれています。
リーグ別の日本人選手の成功パターン

海外サッカーに挑戦する日本人選手の動向を分析すると、リーグごとに明確な傾向が見えてきます。
リーグ別日本人選手の在籍傾向
ブンデスリーガが日本人に合う理由
ブンデスリーガが日本人選手の受け入れに積極的な背景には、いくつかの構造的な理由があります。
まず、ドイツサッカーが重視する「規律」「組織力」「運動量」は、日本人選手が育成段階から叩き込まれる要素と一致しています。この文化的な親和性が、適応期間の短縮につながっているのです。
また、ブンデスリーガの「50+1ルール」(クラブの過半数の議決権をファン・サポーターが持つ制度)により、地域密着型のクラブ運営が行われています。この環境は、コミュニティを大切にする日本人選手にとって馴染みやすいものです。
さらに、ドイツの生活インフラの充実度も見逃せません。公共交通機関の正確さ、治安の良さ、そして日本食レストランの多さは、海外生活の不安を軽減する大きな要因となっています。
プレミアリーグへのステップアップ
近年の傾向として、ブンデスリーガで実績を積んだ日本人選手がプレミアリーグへステップアップするケースが増えています。
遠藤航選手(シュトゥットガルト→リヴァプール)や冨安健洋選手(ボローニャ→アーセナル)のように、欧州の中堅リーグで実力を証明してからビッグクラブへ移籍するルートが確立されつつあります。
この「段階的ステップアップ」は、サッカー移籍の世界では非常に合理的な戦略です。いきなりトップリーグに飛び込むよりも、適応しやすい環境で基盤を作り、そこから上を目指す方が成功率が高いことが、多くの事例から見えてきています。
日本人選手の海外挑戦の歴史と進化

日本人選手の海外サッカー挑戦を振り返ると、その変遷は日本サッカー全体の成長と密接にリンクしています。
黎明期から確立期へ
1994年、三浦知良選手がイタリア・セリエAのジェノアに移籍したことは、日本サッカー史における歴史的な出来事でした。当時はまだJリーグが発足して間もない時期であり、「日本人がヨーロッパでプレーする」こと自体が大きなニュースだったのです。
その後、中田英寿選手が1998年にペルージャへ移籍し、セリエAで鮮烈な活躍を見せます。中田選手のローマでのスクデット(リーグ優勝)獲得は、日本人選手が欧州トップレベルで通用することを世界に証明した瞬間でした。
2000年代に入ると、稲本潤一選手(アーセナル)、小野伸二選手(フェイエノールト)、中村俊輔選手(セルティック)など、複数の日本人選手がヨーロッパの舞台に立つようになります。
転換期と爆発的増加
2010年代は大きな転換期でした。
香川真司選手がドルトムントでリーグ2連覇に貢献し、その後マンチェスター・ユナイテッドへ移籍。岡崎慎司選手はレスター・シティの奇跡的なプレミアリーグ優勝メンバーとなりました。
そして2020年代に入ると、海外でプレーする日本人選手の数は爆発的に増加します。海外サッカー移籍の動向を見ても、毎年のように新たな日本人選手がヨーロッパへ渡っている状況です。
ポジション別に見る日本人選手の特徴

かつて「日本人選手はMFタイプが多い」と言われていた時代がありました。
しかし現在では、GKからFWまであらゆるポジションで日本人選手が活躍しています。この変化は、日本のユース育成の進化と、選手個々の意識の変化を反映しています。
FW(フォワード)
日本人FWの海外での成功例は着実に増えています。古橋亨梧選手(セルティック)はスコティッシュ・プレミアシップで得点王に輝くなど、ゴールへの嗅覚で結果を出し続けています。
浅野拓磨選手は2022年ワールドカップのドイツ戦で決勝ゴールを決めたことで世界的な注目を集めました。スピードを武器にした日本人FWの可能性を示した選手の一人です。
MF(ミッドフィールダー)
ミッドフィールダーは依然として日本人選手が最も多く活躍するポジションです。
久保建英選手の創造性、堂安律選手の得点力、守田英正選手の守備力——それぞれ異なるタイプのMFが欧州で評価されています。特に守田選手(スポルティング・リスボン)は、ポルトガルの名門でレギュラーの座を確保し、チャンピオンズリーグでも存在感を示しました。
田中碧選手もリーズ・ユナイテッドでプレーするなど、ボランチ(守備的MF)の分野でも日本人選手の需要は高まっています。
DF(ディフェンダー)
冨安健洋選手と板倉滉選手の成功は、日本人DFの評価を大きく変えました。
以前は「フィジカルで劣る」と見られがちだった日本人DFですが、読みの鋭さ、ポジショニングの正確さ、そしてビルドアップへの貢献度で、欧州のクラブから高い評価を得るようになっています。
GK(ゴールキーパー)
日本人GKの海外挑戦はまだ数が限られていますが、着実に道が開かれつつあります。
川島永嗣選手がフランスやベルギーで長年プレーした実績は、後続の選手たちに大きな勇気を与えています。GKは最も文化的・言語的な壁が高いポジションとも言われますが、今後の展開が期待される分野です。
海外サッカーで日本人選手の試合を視聴する方法
海外で活躍する日本人選手の試合を観たいと思っても、「どこで観られるの?」という疑問を持つ方は少なくありません。
主要な視聴プラットフォーム
日本国内から海外サッカーを視聴するには、いくつかの選択肢があります。
DAZN(ダゾーン)は、プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエAなど複数のリーグを配信しており、日本人選手の試合を追いかけるには最も包括的なサービスです。月額料金は変動しますが、複数リーグを横断的に視聴できるメリットがあります。
WOWOWはチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの放映権を持っており、日本人選手が欧州カップ戦に出場する際にはこちらが必要になります。
ABEMAはプレミアリーグの一部試合を無料配信するなど、サッカー放送予定をチェックしながら無料で視聴できる機会も増えています。
サッカー日本代表の無料放送と合わせて、海外組の活躍を追いかける環境は年々充実してきています。
試合スケジュールの確認方法
欧州サッカーは日本時間の深夜から早朝にかけて行われることが多いため、スケジュール管理が重要です。
各リーグの公式サイトやアプリに加え、日本語で情報を発信しているサッカーメディア(Goal.com日本版、フットボールチャンネルなど)を活用すると、日本人選手の出場情報を効率的に把握できます。サッカー日本代表の日程と合わせてチェックしておくと、代表ウィーク中のリーグ戦休止なども把握しやすくなります。
日本人選手の海外移籍を成功させる要因
海外で成功する日本人選手には、いくつかの共通点が見られます。
語学力とコミュニケーション
海外で長期的に成功している日本人選手のほぼ全員が、現地の言語を積極的に学んでいます。
長友佑都選手がイタリア語を流暢に話し、チームメイトとの関係構築に成功したことは有名です。久保建英選手もスペイン語を自在に操り、記者会見でも通訳なしで受け答えしています。
言語の壁を越えることは、戦術理解やチーム内での信頼獲得に直結します。ピッチ上での瞬間的なコミュニケーションが求められるサッカーにおいて、語学力は技術と同等に重要な武器なのです。
エージェントとクラブ選びの重要性
Jリーグからの移籍を含め、どのクラブを選ぶかは成功を大きく左右します。
経験上、最初の海外クラブ選びで重要なのは「ビッグクラブかどうか」ではなく、「出場機会が得られるかどうか」です。試合に出られない環境で成長することは極めて難しく、中堅クラブでレギュラーとして経験を積む方が長期的にはプラスになるケースが多いと言えます。
成功パターン
- 現地語の積極的な習得
- 出場機会を重視したクラブ選び
- 段階的なステップアップ戦略
- チームへの献身性と適応力
失敗パターン
- 知名度だけでビッグクラブを選択
- 言語習得への消極的な姿勢
- 出場機会がない状態の長期化
- 文化的な適応を軽視
フィジカル面の進化
かつて「フィジカルで劣る」と言われた日本人選手ですが、この評価は急速に変わりつつあります。
遠藤航選手のデュエル勝率の高さ、冨安健洋選手の対人守備の強さは、フィジカル面でも欧州のトップレベルと渡り合えることを示しています。これは個人の努力だけでなく、日本のユース育成におけるフィジカルトレーニングの質的向上も大きく寄与しているでしょう。
今後注目すべき若手日本人選手
海外サッカーにおける日本人選手の未来は、非常に明るいと言えます。
現在、ヨーロッパの各クラブのユースチームやセカンドチームには、将来の主力候補となりうる若い日本人選手が多数在籍しています。J3リーグをはじめとするJリーグの下部組織から海外へ直接渡る選手も増えており、挑戦の低年齢化が進んでいます。
特に注目すべきは、10代のうちから欧州のアカデミーで育成を受ける「欧州育ち」の日本人選手が増えていることです。久保建英選手のようにスペインの下部組織で育った選手は、言語や文化の壁がほぼなく、より自然にトップチームへ昇格できる可能性を持っています。
今後は、Jリーグ経由の移籍に加えて、欧州アカデミー出身の日本人選手がトップリーグで活躍するケースがさらに増えていくことが予想されます。
よくある質問
現在、海外でプレーしている日本人サッカー選手は何人くらいいますか?
欧州5大リーグ(プレミアリーグ、ブンデスリーガ、ラ・リーガ、セリエA、リーグアン)だけで40名以上の日本人選手が在籍しています。これに加えて、オランダ(エールディヴィジ)、ポルトガル(プリメイラ・リーガ)、ベルギー(ジュピラー・プロリーグ)、スコットランドなどを含めると、ヨーロッパ全体では100名を超える日本人選手がプレーしていると言われています。さらにアジアや北米・南米のリーグも含めると、その数はさらに増加します。
海外サッカーで活躍する日本人選手の試合はどこで観られますか?
主要な視聴手段としては、DAZN(プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエAなど)、WOWOW(チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ)、スカパー!(ブンデスリーガなど)があります。また、ABEMAがプレミアリーグの一部試合を無料配信するケースもあります。各プラットフォームの放映権は年度によって変わることがあるため、シーズン開始前に最新情報を確認することをおすすめします。
日本人選手が最も多く所属しているリーグはどこですか?
歴史的にも現在においても、ドイツ・ブンデスリーガが最も多くの日本人選手を受け入れてきたリーグです。ドイツのサッカー文化が日本人選手の特性と相性が良いこと、クラブ側の受け入れ体制が整っていること、そして先輩選手たちが築いた信頼と実績が、後続の選手たちの道を開いています。近年はプレミアリーグやラ・リーガへの移籍も増加傾向にあります。
日本人選手が海外で成功するために最も重要なことは何ですか?
多くの成功例を分析すると、「語学力」「出場機会の確保」「段階的なステップアップ」の3要素が特に重要です。現地の言語を習得してチームメイトやスタッフとの信頼関係を構築すること、自分のレベルに合ったクラブを選んで試合経験を積むこと、そして焦らずキャリアを段階的に築いていくことが、長期的な成功につながっています。技術やフィジカルはもちろん前提条件ですが、それだけでは海外で生き残ることは難しいのが現実です。
今後、海外サッカーで注目すべき日本人の若手選手はいますか?
毎年のように新たな才能が欧州に渡っており、注目すべき若手選手は数多くいます。特に欧州のアカデミーで育成を受けている10代の選手たちは、言語や文化の壁が低い分、より早い段階でトップチームに昇格する可能性を秘めています。また、Jリーグで頭角を現した若手選手が早期に海外移籍するケースも増えており、日本人選手の海外挑戦はますます加速していくことが予想されます。具体的な選手名は移籍市場の動向によって変わるため、各シーズンの移籍情報をこまめにチェックすることをおすすめします。

