東京でサッカーを観に行こうと思ったとき、多くの方が最初にぶつかる疑問があります。「陸上トラックのない、ピッチが近いスタジアムは東京にないのか」。
実は、答えは「ある。ただし数は非常に限られている」です。
人口1,400万人を抱える東京都には、Jリーグクラブが複数存在するにもかかわらず、23区内に大規模なサッカー専用スタジアムは今も存在しません。一方で、築地や代々木公園といった都心の一等地でスタジアム構想が動き始めており、東京のスタジアム地図はこの数年で明らかに書き換わろうとしています。
個人的にも、西が丘での試合を観たあとに味の素スタジアムの大型試合を観ると、同じサッカーでも体験がまったく違うことに毎回驚かされます。この記事では、いま実際に足を運べる球技専用スタジアムから、計画中のプロジェクト、そして「なぜ東京には専用スタジアムが少ないのか」という構造的な理由までをまとめて整理します。
この記事で学べること
- 東京23区で常時使える球技専用スタジアムは味の素フィールド西が丘が事実上唯一
- 西が丘の収容は7,258人でJ3基準は満たすがJ1基準の1万5千人には届かない
- 築地市場跡地には約5万人規模の全天候型スタジアム計画が動き出している
- 渋谷区の代々木公園でも球技場構想が浮上し都心立地の可能性が広がる
- 専用スタジアムが少ない最大の理由は都市公園法と用地コストという制度的な壁
そもそも「サッカー専用スタジアム」とは何を指すのか
混同されやすいのですが、業界では「サッカー専用」と「球技専用(球技場)」は区別されます。
サッカー専用は文字通りサッカーのみを想定した施設。球技専用は陸上トラックを持たず、サッカーとラグビーなど複数の球技で使う施設です。日本ではラグビーとの併用が前提となることが多いため、現実的には「球技専用=トラックのないスタジアム」と考えるのが実態に近いです。
観る側にとって重要なのは、この「トラックの有無」です。トラックがあるとゴール裏からピッチまで30メートル以上離れることもあり、選手の声や球際の音が届きにくくなります。国内のスタジアム比較についてはサッカースタジアム ランキングでも、この観戦距離が評価の分かれ目になっています。
今すぐ観戦できる東京の球技専用スタジアム

東京都内で、トラックなしの常設スタンドを備えた施設は驚くほど少数です。以下が、実際に公式戦が開催される主要な会場になります。
味の素フィールド西が丘
北区西が丘にある、日本サッカー協会が管理する球技専用スタジアムです。正式名称は国立西が丘サッカー場。1972年の開場以来、日本サッカーの「聖地のひとつ」として機能してきました。収容7,258人という数字は決して大きくありませんが、メインスタンドからピッチまでの距離が近く、バックスタンドからでも選手のコーチングがはっきり聞こえます。JFL、なでしこリーグ、大学サッカー、各年代の代表戦まで幅広く使われ、23区内で本格的なサッカー観戦ができる事実上唯一の常設施設です。
23区内で唯一といえる本格的な球技専用スタジアム
日本サッカー協会管理の球技場
赤羽駅または赤羽岩淵駅から徒歩約15分
7,258人
北区西が丘
JFL 大学 女子 各年代代表
屋根のあるメインスタンドが快適です。雨天予報の日はメイン側を選ぶと安心
アミノバイタルフィールド
調布市の武蔵野の森公園内にある球技場で、味の素スタジアムのすぐ隣という立地です。大学サッカーや関東リーグの会場として使われ、収容規模は3,000人前後。プロの公式戦向けというよりアマチュアの中心的な舞台ですが、トラックがないため観戦距離は近く、育成年代やアマチュアの試合をじっくり観たい方には貴重な選択肢になります。
味の素スタジアム隣接の小規模球技場
大学サッカーとアマチュアの主要会場
飛田給駅から徒歩約10分
3,000人規模
調布市 武蔵野の森公園
大学 関東リーグ ラグビー
味の素スタジアムの試合とハシゴできる日程が狙い目です
駒沢オリンピック公園第二球技場
世田谷区の駒沢オリンピック公園内にある球技場です。同じ公園内の陸上競技場が有名ですが、こちらはトラックのない専用ピッチ。常設スタンドは限定的で、社会人リーグや大学、育成年代の試合が中心となります。都心からのアクセスが良く、散歩のついでにサッカーに触れられる稀有な場所です。
都心からのアクセスが最も良い球技専用ピッチ
公園内の球技場
駒沢大学駅から徒歩約15分
常設スタンドは小規模
世田谷区 駒沢公園
社会人 大学 育成年代
週末午前の社会人リーグは入場無料の試合も多く気軽に楽しめます
Jリーグの試合が行われる東京の主要スタジアム

次に、専用ではないものの東京のサッカー観戦の中心となっている施設を整理します。
味の素スタジアム
調布市にある約5万人収容の大型スタジアムで、FC東京と東京ヴェルディという2つのJ1クラブがホームとして使用しています。陸上トラックを備えた多目的型で、東京都内で最も多くJリーグの公式戦が開催される場所です。飛田給駅から徒歩5分という好アクセスは、首都圏のスタジアムの中でも屈指といえます。
国立競技場
約6万8千人を収容する日本最大級のスタジアムです。恒久的な陸上トラックを持つため専用ではありませんが、ビッグマッチの舞台として定着しました。収容規模と都心立地を両立できる唯一の施設という点で代替がききません。座席の選び方については国立競技場 ゴール裏の視点も参考になります。
町田GIONスタジアム
町田市の野津田公園にあるFC町田ゼルビアのホームです。座席増設と屋根設置の改修を経て1万5千人規模となり、J1のホームゲームを開催しています。トラック付きのため観戦距離には課題があり、将来的な移転や新設の議論が続いている点は町田ゼルビア スタジアム 移転でも整理しています。
東京の主要スタジアム収容規模の比較
緑色が球技専用施設。構想中の施設は計画時点の公表規模です。
動き始めた東京の新スタジアム計画

ここ数年、状況は確実に変わりつつあります。都心部で複数のスタジアム構想が具体化してきました。
築地市場跡地の多目的スタジアム構想
中央区の築地市場跡地の再開発に、約5万人規模の全天候型スタジアムが含まれる計画です。事業者が選定され、2030年代の開業を目指して進められています。サッカー専用ではなく多目的施設ですが、銀座に隣接する立地で5万人規模という条件は、国内でも前例のないスケールです。都心にドーム型に近い大型スタジアムが生まれれば、東京の観戦環境は根本から変わります。
代々木公園の球技場構想
渋谷区が代々木公園の一部を活用してスタジアムを整備する構想を打ち出しています。1万人規模とも報じられており、公園の再整備と一体で検討されている段階です。渋谷という立地は、試合前後の回遊性という点で日本では極めて希少な条件になります。
葛飾区と江戸川区の球技場整備の議論
23区東部でも動きがあります。葛飾区では、地元クラブのJリーグ参入を目指す動きと連動する形で、区内への球技場整備が長く議論されてきました。江戸川区でも既存スポーツ施設の更新に合わせた検討が話題にのぼっています。いずれも規模や時期は流動的で、正式決定を待つ段階です。
なぜ東京には専用スタジアムが少ないのか
理由はシンプルではありません。複数の制約が重なっています。
第一に用地です。1万5千人規模のスタジアムには、駐車場や動線を含めて広大な敷地が必要になります。23区でまとまった土地を確保するコストは、地方都市とは桁が違います。
第二に都市公園法の制約。大規模施設の多くは公園内に立地しますが、建ぺい率や高さの規制があり、屋根付きの大型スタンドを建てにくい構造になっています。近年はPark-PFIという民間活力を使う手法が広がり、この壁が少しずつ緩みつつあります。
第三に多目的利用の要請です。公共施設である以上、陸上競技や地域行事にも使える設計が求められます。これがトラック付きスタジアムが量産されてきた背景です。屋根や観戦環境の課題は、ニッパツ三ツ沢球技場 屋根のように、既存球技場でも長年議論されてきたテーマです。
専用スタジアムの利点
- ピッチが近く迫力と一体感が段違い
- 同じ収容人数でも音が響き応援が伝わる
- 屋根を架けやすく雨天でも快適
東京で実現しにくい理由
- まとまった用地の取得コストが極めて高い
- 都市公園法による建築規制がある
- 多目的利用を求められ稼働率の確保が課題
初めての方へのおすすめ
初めて東京で専用スタジアムの観戦を体験するなら、以下から始めるのがおすすめです。
🏆 味の素フィールド西が丘
23区内でトラックなしの観戦を体験できる代表格です。赤羽駅から徒歩圏で、JFLや大学サッカーなど比較的チケットが取りやすい試合が多く開催されています。
🏆 味の素スタジアム
専用ではありませんが、Jリーグの雰囲気を最も手軽に味わえる場所です。飛田給駅から徒歩5分で、アクセスの不安がほぼありません。
🏆 アミノバイタルフィールド
少人数でゆったり観たい方向け。大学サッカーの熱量と、ピッチとの近さを同時に味わえます。
よくある質問
東京23区に本格的なサッカー専用スタジアムはありますか
常設の球技専用施設としては、北区の味の素フィールド西が丘が事実上唯一です。ただし収容7,258人のため、J1やJ2のホームスタジアム基準を満たす大規模専用施設は23区内に存在しません。
味の素スタジアムはサッカー専用ではないのですか
陸上トラックを備えた多目的スタジアムです。収容約5万人でJ1クラブ2つのホームとなっていますが、専用スタジアムと比べるとピッチまでの距離があります。
築地のスタジアムはJリーグで使われますか
現時点では多目的スタジアムとして計画されており、特定クラブの本拠地になると決まっているわけではありません。大規模イベントとの併用が前提とされています。
専用スタジアムと球技場は何が違うのですか
サッカー専用はサッカーのみを想定した施設、球技場はラグビーなど他競技とも共用する施設です。どちらも陸上トラックがないため、観戦体験としてはほぼ同じ近さが得られます。
新スタジアムの最新情報はどこで確認すればよいですか
東京都や各区の公式サイトにある再開発・スポーツ施設整備のページが最も確実です。報道は計画変更前の情報が残っていることもあるため、発表日を必ず確認することをおすすめします。
これからの東京スタジアム地図
東京は長く「大きなスタジアムはあるが、近いスタジアムがない」都市でした。
その状況は、築地と代々木公園という都心プロジェクトによって変わる可能性があります。実現までにはまだ時間がかかりますが、まずは西が丘に足を運び、専用スタジアムの距離感を体験してみることをおすすめします。その体験があれば、これから発表される計画のニュースが、単なる数字ではなく自分ごととして読めるようになるはずです。
各クラブの試合日程や会場は変更されることもあるため、観戦前には公式発表の確認を忘れずに。J3リーグを含む下部カテゴリーの試合こそ、こうした専用スタジアムで開催されることが多く、意外な発見が待っています。

